ノマドと法 「仕事するのにオフィスはいらない」にするためには



 『仕事するのにオフィスはいらない
  ノマドワーキングのすすめ 佐々木俊尚著  (光文社新書) (新書)


本書ではノマド(遊牧)ワーキングを提唱している。

前半でノマドワーキングの概要と実例を紹介し、
ノマドワーキングに必要な心構え、持っておくべきスキルを説く。
後半ではGoogleやスマートフォンを活用した具体的な仕事術の紹介。

ノマドワーキングとはオフィスや雇用に囚われない新しいワークスタイル。
物理的にも精神的にもフリーランスで行こうって感じだろうか。

スマートフォンを持たない以外は、実際自分の仕事もかなりノマド。
PCとE-Mobileと携帯電話があれば大抵どこでも仕事できる。
自宅でも客先でも駅のホームでも。PCをたちあげたところが仕事場になっている。
PCがネットにつながればSkypeで社員と繋がるので連絡にも特に困らないし、
Skypeつながらなければ、メールでも携帯でも何らかの形で連絡とりあえる。

なので著者の提案は概ね共感できるし、紹介されている仕事術はとても参考になる。

ただ、全員が全員フリーランス化が良いかと言うとそうでもない気がする。
会社組織下で働くメリットも多分にある。
会社を辞めてみればわかるが、普通に生活をしていくだけでも行政手続きは思いのほか多いし繫雑。
実務上でも様々な余分な作業が発生するし、リスクも大きい。
まだそれらをアウトソースするには環境は整っているとはいえない。

技術者にとってはこうした余計なことに気を取られない環境下の方が、
より力を発揮できるのではないかと思う。

要はフリーランス的な動きが出来ればよいのであって、契約上フリーランスになる必要はない。
著者が唱えるノマドに必要なアテンションコントロールを持った技術者であれば、
会社組織下でもノマド的スタイルを適用した効率的な働き方が可能だろう。

ここで悩ましいのが時間と場所の管理と法。
労働基準法を始めとした法律との適合と役所的対応への対応。
情報通信技術の活用を前提としていない法ではまだまだ現実との歪みがある。
また、労働者保護が前面に出てしまい(労働者は搾取される前提)
労使間の信頼関係に基づいた方法がなかなか認められないのも面倒だ。
(これは法律だからしょうがないが)

そうしたこともあって、
ノマド的要素を現行法に適合させた、IT業界向けの就業規則のひな形を作ろうと、ここ半年ほど知人の社労士と勉強会(9割型私が勉強させてもらっている状態)を重ねている。
社会人大学院に通い労働法について深く学んでいる社労士は、
現行法令による判例を中心とした法務知識を、
私はシステム開発における実務ベースの事例や私自身が考えるあるべき仕組み案を、
お互いがそれぞれ持ち寄る形で議論している。

もちろん、こうした流れに役所がまったく対応していないと言う訳ではなく、
意外なほど早くからこうしたワークスタイルの検討はされている。

 >テレワーク普及促進対策(厚生労働省)

でも残念なのはアナログ&有線接続時代の考え方をひきづっていることと、
法適用に例外事項が発生しないような役所的規約つくりになっていること。

厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長へ宛てた通知では、
在宅勤務やテレワーク、モバイルワークの必要性を認めたうえで、導入を促しているが、

ネットワークごしの管理監督状態の定義は実際こんな感じである。

「使用者の指示により常時」とは、労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することが使用者から認められていない状態の意味であること。
「通信可能な状態」とは、使用者が労働者に対して情報通信機器を用いて電子メール、電子掲示板等により随時具体的指示を行うことが可能であり、かつ、使用者から具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態(即ち、具体的な指示に備えて手待ち状態で待機しているか、又は待機しつつ実作業を行っている状態)の意味であり、これ以外の状態、例えば、単に回線が接続されているだけで労働者が情報通信機器から離れることが自由である場合等は「通信可能な状態」に当たらないものであること。
※「情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について」一部抜粋



仮に労基や雇用保険機構などのお役所の調査が入った場合は、

 「Skypeで常時連絡取れるようになっているから大丈夫です」

では駄目で、上記状態を合理的に説明することが求められる(はず)。

まだまだ現行法は古いオフィス(上司が常に監視できる)環境を無理やりネット置き換えてやろうとしている。
アナログな時代のスタイルをそのままデジタルで解釈しようとするから無理がある。
デジタル+ネット時代にはそれ相応の法律がが必要だ。

多様な勤務体系の導入を進めることは歓迎だが、時代にあった法改正も同時に進めていかないとね。

次の政府はどうなることやら。
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