「複雑系科学技術」が日の目を見た日

複雑系科学技術フォーラム


 東京大学産学連携協議会 科学技術交流フォーラム
 第16回「複雑系科学技術」‐複雑さに挑み、複雑さを活かす科学技術へ向けて-


に行ってきた。

先日の「最先端研究開発支援プログラム」の合原さんチームの採択とはまったく別タイミングの開催であると断りながらも、
参加者みな一様に”10年前はあまり注目されなかったのにね”と感慨深そう。

このフォーラムは
”近未来の社会・経済にとって「解をだすべき技術課題」について、専門分野、産業界を横串にした「産学官の出会いの場」として設定”
されている。

なのでテーマも「複雑系科学」ではなく「複雑系科学技術」になっている。

複雑系科学技術」をテーマに「脳科学」「複雑系コンピューティング」「生物学」「インフルエンザ」「癌治療」などなど幅広い専門家の方が集まり研究のエッセンスを伝えた。

「複雑系ネットワーク」についてちらっと書籍にあたった程度の私にとってはみんな新鮮な話。

さすがに咀嚼しきれないので、紹介された本や気になった言葉などを備忘代わりに。

●合原 一幸(東京大学 生産技術研究所 教授)
・「数理工学」とは現実の諸問題を数理モデリング。数理的手法によって解釈して問題の解決へ役立てる。
・鳩山民主党代表も数理工学出身。
・カオス理論を組み込んだ食洗機が発売されたことがある。ただし”カオス”じゃ売れないので”ニューロ・ファジィ”といいかえられた。
複雑系は「全体と部分」「脳と神経細胞」「企業と社員」の間の循環を重視。要素間の循環が創発を生み出す。
・合原さん紹介(というか合原さん)の本

社会を変える驚きの数学  社会を変える驚きの数学 (ウェッジ選書 32 地球学シリーズ)


隠された力を引き出す会社  隠れた力を引き出す会社


●山口 陽子(東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授)
・脳はリズムで経験を記憶する。
・リアルタイムで脳は更新されていく。
・シータリズムは変化をつなげる。
・情動系のパワーはシータリズムを増大させる。

●河野 崇(東京大学 生産技術研究所 准教授)
・カオスニューロンの持つ不応性により、直前に選んだものは選ばない特性がある。
・全結合カオスニューラルネットワークは”なるべくよい組み合わせをみつける”そして”時間をかければかけるほどよい組み合わせがみつかる”
・「ニューロモルフィックハードウェア」とは神経系の解剖学的形態や生理学的機能をヒントにして設計された電子回路システム。高いロバスト性をもち、自己学習する。

●池谷 裕二(東京大学 大学院薬学系研究科 准教授)
・科学は再現性のないものについては沈黙するしかない。ニューロンの発火位置は再現性がない。回路活動の状態は遷移する。脳は元の状態にはもどらない。でも再現性がないという事実そのものには再現性がある。
・脳の自発活動に着目。エネルギーの95%を自発活動につかっている。脳は外部刺激がなくても、いつでも活性化状態にある。
・神経回路は同じ刺激を与えてもアウトプットがばらつく。
・入力+揺らぎ=出力 
 →人間の行動が事前に分かる。プロゴルファーがパットはずすはずさないだけでなく、ホールまでの距離まで事前に分かる。
・繰り返し作業は30秒前から6秒前に分かる。これはリスクコントロールに役立つ。
・揺らぎは脳高次機能に密接に関係。
・回路構造+ノイズ=自然な揺らぎ

・この有名な本の作者だったんだ。どこでも売ってるので後でいいやと思ってたけど、話を聞いて読みたくなった。
単純な脳

単純な脳、複雑な「私」

●金子 邦彦(東京大学 大学院総合文化研究科 教授)
・著書
生命とは何か生命とは何か―複雑系生命科学へ

この辺で頭がショート。

ゆらぎとかノイズとかスパイクとかとてもバラバラな動きが全体としては法則性があって、それをうまく利用すれば様々な分野に応用可能ってところだろうか。
なんだか、釈迦の手のひらで踊る的で不思議。

応用範囲が広いということだけはなんとか理解した。

この”複雑系”をわかりやすく伝えるのは至難の技だが、
池谷さんの説明はこなれてた感じ。

関連エントリー
最先端研究開発支援プログラム「中心研究者」の合原氏の話が聞けるナイスタイミング
雑系をわかりやすく

関連記事

2009/09/09 01:30 | イベント・セミナーCOMMENT(2)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

複雑系の将来

複雑系は、20年周期で話題になりますね。一昔は、R.Tom のカタストロフィでした。その後、フラクタルがはやって、そのあと1985年ごろneuralがはやって、10年前からカオスがはやりましたね。もう下火になっているようですね。世の中の非線形現象を数理的に解釈することはいろいろできそうですが、従来の「非複雑系」的手法に代替するまでにはいっていない。機能が及ばないからです。大学でおもしろおかしくやるテーマではありますが。

No:103 2009/09/10 17:23 | それから #- URL [ 編集 ]

Re: 複雑系の将来

>それからさん

コメントありがとうございます。

なるほど、10年周期なのですね。まだまだ既存手法には及ばないのは残念ですが、
通信システムの経路選択では「二次割当問題」の解決が常に課題となりますから、カオスニューラルネットワークには期待しています。

No:104 2009/09/11 01:33 | M322 #- URL編集 ]

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

 | BLOG TOP |