その席へどう着かせるか。

イス

サイエンスシートなる新手の科学技術コミュニケーションの場が始まるらしい。

 >サイエンスシート -Science Sheet-公園にシートを敷こう!

野外にブルーシートを敷いて、その上で科学者と自由気ままに語り合う。
誰でも気軽に立ち寄れ、気軽に去れる。
そんな場をつくるのだそうだ。



現状のサイエンスカフェがなかなかそうもいってない現状を憂いての活動だ。

仕掛けているのはあの『社会科見学に行こう』を主宰している小島健一さん。

小島さんのネットワークをつかった科学者がゲストだ。とても魅力的。
そんなゲストと青空の下、少人数で、なんてたまらない会になるだろう。
個人的にとても参加したい。


ただ・・・

結局のところ、これは、科学技術マニアのためのイベントで。
理科好きを、より理科好きにする催しになりそう。
(もちろんこれはこれで良いイベント)

私自身はサイエンスカフェの企画に関わったことはほとんどないのだけれど、
サイエンスカフェに関わっている方たちから見聞きしている範囲では、
サイエンスカフェには大きく二つあって、
 
 ”科学って面白い、技術ってスゴイ、センス・オブ・ワンダーな世界をみせる活動”
 ”科学の不確定さ、技術の不安定さ、主にリスク情報を共有する活動”

双方ともに、科学技術マニアより、無関心層の取り込みを目指しているように見える。
(研究者側へのフィードバックや双方向性はここでは置いておく)


このうちの後者、いわゆる「社会の中の科学」が目指す科学技術コミュニケーション

「市民科学」
「リビングサイエンス」
「レギュラトリーサイエンス」
「リスクコミュニケーション」
内田麻理香さん
 etc

この辺の文脈でキーとなる(科学技術の)無関心層には「サイエンスシート」は届かないだろう。

<追記>

改めてサイエンスシートのHPのみたら、
必ずしもセンスオブワンダーを目指しているわけでもなく、
また、リスク情報を共有する場でもなく、
もっと単純に、お日さまの下、語り合いましょう。その中に科学者もいますよ。って設定ですね。
後述する”無関心層の導線に情報を置く方法”のリーズナブル&エコ版なのかもしれないな。

<追記/>


BtoBの場と違って、利害が直接絡まない(その科学技術のもたらす作用を意識してない)状態の人を振り向かせるのは至難の業。

当ブログでも何度か触れてきた「合理的無知」。

 >「合理的無知」とサイエンスコミュニケーション

この「合理的無知」下でリーチさせるには、何か別の力が必要だろう。
人数を少なくして話しやすくするとか、大物をつれてくるとかではなくて、それ以前の、そこへの距離を縮める力。


強制的な力か、偶然を創りだす力か。


もっとも手っ取り早い方法はやはり教育の場。
学校なり親なりが強制的にその場に連れていく。
教育の中で、しっかりと科学技術への興味・関心・疑問を植え付ける。


しかし、既に大人になった人はもう間に合わない。


そうなるとメディア。

テレビでもネットでも街頭でも、とにかく情報を広める。露出度を高める。
でも、やっぱり興味がなければ目に入らないし、フィルターにも引っかからない。
仮に目についたとしてもやはり無視されることになるだろう。

無関心層の導線に情報を置く方法。これは一つの良い解決方法だと以前は思っていたが、多くの人の目に触れるにはやはりコストがかかってしまうようだ。

 >【JAXA】事業仕分け B-11 _ 研究開発・広報 宇宙機構(文科省) 2010_04_26.part5



じゃあどうすれば。


主題の科学技術でひっぱる方法はとりあえず封印して、

科学技術ではない何か別の力によって連れてくる。



一つは相手の興味関心。

カソウケンさんこと、内田麻理香さんが家事ネタでママさん層に切り込んだように、
車好きには車、旅行好きには旅行、経済好きには経済の話題をメインに。
まず相手の懐に入り、その中に伝えたい科学技術の話を忍ばせる。

その為には伝える相手の関心に関心を持ち、相手が喜んで寄ってくる場を設定する。
サービスの精神が必要。

子供向けだけど、これなんかまさに相手の懐。

 doraemon_01_01.jpg
 >ドラえもんの科学みらい展(日本科学未来館)


二つ目は人のつながり。

子供にしろ、恋人にろ、友人にしろ、
親しい人に「ねぇ楽しいから一緒にいかない?」と誘われたら多少興味がなくてもたまには付き合いで行くこともあるだろう。
それは前述の”相手の関心に関心をもつ”の逆パターン。自分の関心に相手から関心を持ってもらう。

サイエンスコミュニケーション活動している人たちって、身近な人たちを誘っているのだろうか?
結構、一回り遠くの人に届けようとしていないだろうか?

家族、学校、会社、近所。
近くに存在する人を誘うには勇気がいる。
興味がないことを既に知っているから。
うまくいかないときに、近すぎてあとが辛いから。


でも周りの人を理解させないで、遠くの誰かに届くだろうか。

まずは半径5メートル範囲にいる人たちに話しかけてみる。

時間はかかる。
だが、これからはソーシャルネットワークの時代。
つながりがつながりを呼び、草の根的に輪が広がるかもしれない。



センス・オブ・ワンダーでも、リスク認識にしても、
まずその場にいくことがなければ感じることはできない。


伝える手段や場を用意するだけでは、
いつになっても必要な人に届かない空回りコミュニケーションが量産されていく。


ドアを開けて、手を引っ張って、連れてくる方法も考えていかないと。


こうした距離を縮めていくことが、
サイエンスシートやサイエンスカフェなどの場をより活かすことにつながるのだろう。


ツレにことごとく断られている自分への自戒を込めて。



関連エントリー

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「経営者」に伝わる科学技術
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「科学技術と社会の相互作用」第2回シンポジウムに半分だけ参加してきた(備忘録)
21世紀の科学技術リテラシー第2回シンポジウムに参加してきた(備忘録)
「合理的無知」とサイエンスコミュニケーション


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.01 2010 サイエンスコミュニケーション comment3 trackback1

comment

なぎ
断られてるんですねー(^_^:;)

うんうん、そうだよなーと頷きながら読みました。親や兄弟や友達に理解してもらうって大事ですよね。

と以前、某大学生にアドバイスしたら、その娘の家は、もう家族全員が理解済みだと返されちゃいましたけどf^_^;

そういう家庭もあるんだなーと驚いた経験です。

余談でした。
2010.06.02 00:36
さかさパンダ
ツレさんとご一緒に、毎週木曜夜に開催中の三鷹のサイエンスカフェ「星と風のサロン」に、ぜひどうぞ。http://www.nao.ac.jp/info/hoshicafe/salon.html

「その席にどう着かせるか。」のためには、「いつも人が集まっていて、なんだかおもしろそうで、予約もいらないらしい・・・」は、かなり有効です。

実際「いつも通りがかりに見かけて気になっていて。」という初参加の方が、毎回コンスタントにいらっしゃいます。そのまま常連さんになってくれることもあります。

科学技術マニアも、無関心層も、身近なところにオモシロそうな「場」が提供されれば、興味を持ちやすいでしょうね。

科学カフェでも、哲学カフェでも、サロンでもかまわないので、壁や垣根のない、入口の広い常設のコミュニケーションの「場」が、身近なところに増えるといいです。リアルな「場」の地道な量産も、これからの時代には必要だと感じます。

サロンのちーちーままより
2010.06.02 14:48
M322
>なぎさん

理解はしているけど共感はしてくれない、もしくは相手にしてくれない。

そんな感じです。

子供はだいぶ巻き込みました。


>さかさパンダさん

場をつくらなければ連れてもこれないですしね。

”リアルな「場」の地道な量産”大事だと思います。
2010.06.02 19:59

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