コラボレーションの軌跡を可視化する博物館的展示な 「実験工房展」

実験工房1



東京は世田谷美術館で開催中の

 「実験工房展 戦後芸術を切り拓く

を見てきた。

実験工房とは戦後、美術や音楽など、様々なジャンルを越えて集まった若手前衛芸術家のグループである。

“である。”なんて書いたが、つい最近までこんなグループのことなんて全く聞いたことがなかった。

なぜそんな知らないグループの展覧会に行ったのかというと。


ここのところ訪れた展覧会で立てつづけに「実験工房」なるキーワードが現れたから。

一つは川崎市岡本太郎美術館で開催されていた

 『かたちとシミュレーション 北代省三の写真と実験

もうひとつは、はけの森美術館

 『コレなんだ?佐藤慶次郎のつくった不思議なモノたち


さらに岡本太郎が本グループを支援していたらしいことを知ってますます興味がわく。
ググっていたら、「実験工房」にスポットを当てた展覧会が開催されているという情報を見つけさっそく観に行った次第。


当日はタイミングよく、実験工房の有識者による講演会

 「実験工房―コラボレーションの磁場
  (講師:大谷省吾(東京国立近代美術館主任研究員)」

も開かれていたのでこちらも拝聴した。



講演の題目にもあるように、実験工房は、コラボレーションにより新たな芸術領域を開拓しようとした集団だ。
詩人、瀧口修造の元に集った芸術家達が、当時にしては新しいテクノロジーを積極的に応用して作品を創り出した。

その分野は、絵画、音楽のみならず、写真、映像、照明、舞台、様々な表現が対等に融合していた。
舞台では役者が主役ではなく、大道具もまた一つの表現物となっていたり、
誰かが創ったオブジェを撮った写真は、単なる記録ではなく、作品を撮った写真自体がまた意味のある作品となっていた。

どちらがどちらの主役・脇役になることなく組み合わさって新たな一つの作品を生み出す。

はけの森美術館での「コレなんだ?佐藤慶次郎のつくった不思議なモノたち」展の壁には、佐藤慶次郎の作品と並ぶように谷川俊太郎の詩が存在感をもって掲示されていた。変わった展示だなと思っていたけど、これも実験工房の流れを汲んだ展示だったと気づく。

実際、谷川のデビュー後の間もないころに実験工房のメンバーからコンタクトし、そこから交流が続いていたらしい。
詩人もまたコラボレートする芸術家のひとりだったのだ。


講師の大谷氏いわく、

「いかにして複数のアーティストがヒエラルヒーなしに対等にコラボレーションすることが可能か探究」

していたようだ。


本展ではそうしたコラボレーションの記録が多く展示されていた。

モノとして保管しづらい舞台や映像・音響作品が絡むためか、展示物は作品だけではなく、メンバー間の往復書簡や当時の掲載雑誌、ポスターなど文献が多い。
各々のキャプションも詳細で、さらっと見てまわるのは難しい。
美術展覧会というより、人文系の博物館展示に近い。

学芸員の気合の研究発表の場とも取れるボリュームだった。


もちろん、絵画とオブジェを中心に作品展示もちゃんとある。

その中には岡本太郎の影響を感じさせる作品も多い。

北代省三のいくつかの絵画作品は、岡本太郎的世界を幾何学的にフィルタリングしてパウルクレーっぽい色味にした感じだし、福島秀子のそれは初期の岡本太郎の鬱々とした迫力を思わせる。また、山口勝弘の《ヴィトリーヌ 》は岡本太郎を曇りガラス越しにみるような不思議な感覚を味わえた。


分厚い図録にはさらに各分野から見た評価や調査内容がまとめられている。
こうなると作品集というより、文献に近い。


活字で知る内容はこちらで後でゆっくり見ることにして、
展示場では作品をじっくり視聴することをお薦めする。


実験工房2

この世田谷美術館では、過去に、岡本太郎の展覧会も開催されていたらしく、その時の図録を眺めていたら、実験工房とのつながりや、いままで見たことない作品も掲載されていたので、つい追加で購入してしまった。


作品の背後にある関係性をこれでもかと可視化した展覧会
この取組もまた実験か。


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実験工房展_ページ_1

『実験工房展 戦後芸術を切り拓く』
会期:2013年11月23日~2014年1月26日 1階展示室
会場:世田谷美術館(東京・用賀)
概要:戦後芸術の新たな展開を切り拓いた「実験工房」の幅広い活動の軌跡を、
   絵画、立体、映像、写真のほか、楽譜や公演プログラムなど関連資料
   約400点の展示を通して検証
URL:http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

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2013/12/05 23:00 | 展示COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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